世間的な流行なのかDN内での流行なのかは分からないけど、なんか最近ビートダウンデッキのレシピを良く見かける気がする。
概ね2つのデッキタイプで、1つが「A:中速コンボ+あわよくばアド取り用やコンボパーツクリーチャーでビートダウン」、もう1つが「B:追加ターン系を用いてクロックを詰めるビートダウン」といったタイプだ。


きっかけは多分、GP横浜でエドリックが優勝した事だろうか? 上に書いた2つのタイプの内、Bタイプの方である。
確かにエドリックは良く出来たデッキだと思う。特に「どこを引いても大体同じ、かつ十分な速度で対戦相手を倒せる動きが期待出来る」という部分が素晴らしい。ハイランダーという不安定な環境で、安定した動きが出来るという事は大きなアドバンテージだ。

しかし、自分がEDHを始めてすぐくらいの時にはよく言われていた言葉がある。『EDHでビートダウンは弱い』と。

ではなぜ、今みんながこぞってビートダウンを使い、あまつさえそれで4人戦で勝利しているのか。
ちょっとその辺りが気になったので、今日は自分なりにそれを整理してみようかと。



☆なぜ、EDHでビートダウンが弱いのか
弱点1・対戦相手同士で減らしあう要素はあるものの、減らすべきライフが最大40×3

弱点2・多人数戦であるがゆえに次の次ターンが来るまでに場の状況が大きく変わるため、誰から倒していくかの判断が非常に難しい

弱点3・ハイランダーとはいえ制限の緩いカードプールゆえに、1対1ですら、最速を目指したコンボの速度がビートダウンのそれを上回る

この辺りが代表的な弱点だろうか?
これらはどれもビートダウンの弱さと共に以前から言われている話だ。

ビートダウンが流行っているからには、これらの弱点を何らかの手段で克服している、あるいは環境の変化によって克服されている必要がある。
エドリックをはじめとする流行のビートダウンについて語る前に、まずは一般的なビートダウンがこれらにどう対処しているかを考える。


☆一般的なEDHビートダウンはどうやって弱点を克服しているか
弱点1・ジェネラルダメージや毒殺により、必要ダメージ量の圧縮を図る。
しかしそれですら、一般のマジックの対戦から比べると圧倒的な必要ダメージ量。勝ちきる事は難しい。

弱点2・大量に並べてまとめて圧殺するパターンをデッキに仕込む。
しかしこれには十分な下準備が必要な上、構造上弱点1の克服の仕方と相反する。基本的に1ターンに行える戦闘は1回だけである以上、ジェネラルダメージは1人にしか与えられない。毒殺しようにも強力な毒持ちクリーチャーは頭数が足りず、”大量に並べて”の部分を実践しにくい。

弱点3・ピン除去や広範囲の妨害カードでコンボ側の速度を落とす。
いいから俺の所まで下りて来い戦法。これは弱点1、弱点2それぞれの対処方と相性がいい。
ジェネラルダメージで勝とうとするデッキの場合、パッケージの多いコンボに比べてデッキの枠に空きが作りやすい。思う存分妨害に枠を割いても、デッキのポテンシャルはそこまで落ちない。極論を言ってしまえば必須パーツは「ジェネラルをキャストし、殴る」を行うためのマナ加速だけなのだから。
また、妨害で試合の展開が遅くなる場合、ターンとマナに余裕が出来るようになるため、一度に複数プレイヤーを倒す流れも作りやすくなる。
それゆえに、多くのビートダウンデッキはゲームを減速させる要素(《ハルマゲドン/Armageddon》《月の大魔術師/Magus of the Moon》《無のロッド/Null Rod》《三なる宝球/Trinisphere》《汚染/Contamination》など)が投入される事となる。

しかし結局、上に書いたような対処法では、弱点1と弱点2の解決を両立出来ないし、そもそもこれらの対処法でも力不足だ。
だからこそ『EDHでビートダウンは弱い』と常々言われ続けていた訳である。


では次に、最近はやっているタイプのビートダウンは、それぞれの弱点にどのように対処しているのだろうかと考えてみよう。

☆流行のEDHビートダウン(上で挙げたA及びB)はどうやって弱点を克服しているか

弱点1・A:そもそもライフによる勝利を期待していない。B:追加ターン系で解決する。

Aはあくまでコンボデッキ。コンボパーツであるクリーチャーが”手が空いていたので”相手のライフを削りに行っただけであり、決してコンバットが本分ではない。互いにコンボを止めあってぐだった時の保険のような勝ち手段なので、そもそもライフレースに対する思考の軸が違う。

Bは本来のビートダウンに近いアプローチでのライフレースへの働きかけ。極端な話、2ターンあるのなら20点クロック、3ターンあるのなら14点クロックで勝てる。

Aはともかく、本来ならばBも通常のビートダウン同様に『クロックを縮めても結局通常のゲーム以上に苦労してライフを削らなければならない』となって弱点は埋めきれない。
しかし一部のジェネラルの場合、1枚のターン追加カードがそのまま次の追加ターンに繋がりがちになるため、スタート時点でのクロックの数に関係なくそのまま倍々でダメージが増えて勝ててしまう事がある。
それがBの代表格であるエドリック(ビートダウンしながらカードを引き、追加ターンと追加のクロックを毎ターン得る事を期待している)であり大渦の放浪者(続唱×2の働きにより、クロックを増やしながら追加ターンを得る動きが期待出来る。エドリックと違い「君が死ぬまで殴るのを止めないモード」には入りにくいが、放浪者は速攻付与含めて素のクロックが高い)である。
これらのジェネラルは通常のデッキ以上に追加ターンの恩恵が大きく、それゆえにコンボに追いつける十分な速度までクロックを圧縮出来るのである。


弱点2・A:だからあくまでおまけだから期待してないってば。B:追加ターン系で解決する。

Aは上と同じ。対戦相手のライフを削った時点で仕事は済んでいるので、ビートしやすさという意味での盤面の変化はそんなに気にする必要はない。
対戦相手に時間制限を強いている生物が除去られても、「相手のライフが減っている」という状況は継続している。
次のコンボパーツなりアド取り生物を出した時点で再び同じ場所から時間制限がスタートするので、「クリーチャーを除去られてアドを失った」「召喚酔いと次の生物キャストまでのタイムラグの関係でクロックがちょっと伸びた」以上の損はないのがいい所。しかも前者に関しては、生物の選定基準の段階で除去られる前にアドを取れる物ばかりが選ばれるため、実質ほとんど無視出来たり。

続いてB。
「また追加ターンかよ!」と言われも仕方がない。実際それだけで「戦闘は1ターンに1回だけ」という通常のビートダウンを苦しめていた制限が取っ払われて解決してしまうのだから。
弱点1の項で書いたような事情のため、エドリックや放浪者は比較的楽に戦闘回数を2回~死ぬまで回に増やして繰り返せる。


弱点3・A:通常の中速コンボデッキ同様にピン除去で対処。B:ピン除去である程度の妨害をしつつ、追加ターン系で解決する。

Aはそもそもが高速コンボデッキに有利のつく、コントロール力のある中速コンボ。コントロール要素やアド取り要素がクリーチャーにしてあるので殴れるようになっているというだけで、対高速コンボにおける有利不利の要素は変わらない。(余談であるが、パーツをクリーチャーにしているがゆえに、本来の中速コンボと違い《神の怒り/Wrath of God》のような土地以外リセットを多めに積んだ重コントロール型は苦手に変わっていると自分は考える。(タダの中速コンボならお客さん、ていうか半ば味方w)しかし重コントロールは4人戦のEDHではビートダウン以上の茨の道。あまり気にしなくてもいいだろう)

続いてB。
嵌りさえすれば連続追加ターンモードに入るのは中速コンボ以上。それゆえに、最低限の速攻を抑えるだけのピン除去さえ押さえておけば高速コンボに追いつける。
しかしピン除去に枠を割くと、「追加ターンを得て、殴る」という動きの安定性が損なわれてしまうのが難しい所。それゆえに、弱点3は克服しきれていないと言える。



☆現在の環境
しかし現在、多くのデッキ相手でも安定して強い中速コンボデッキが猛威を振るっており、それを苦手とする高速コンボ型のデッキは下火になりつつあるようだ。
それゆえに、Bの型のデッキは弱点3を埋める必要性が薄く、さらには強デッキである中速の青系コンボとの相性抜群という事もあり、世間で猛威を振るっているのであろうと自分は結論付けた。

また、Aの型のコンボデッキが流行っているのは、Bの場合と同じように、現在メジャーで幅広く強いデッキタイプである通常の中速コンボと当った場合に有利が付く(序盤~中盤は同等。終盤までもつれ込むとライフレースが活きてくる)ためではないだろうか? 過去にあった、トリニティに対するアングリーハーミットのようなイメージ。


☆現在の環境
もしも今後高速コンボが息を吹き返す、あるいは《紅蓮地獄/Pyroclasm》や《滅び/Damnation》などにまで手を出したような、よりコントロールに寄った中速コンボが主流になってくると、また状況は変わってくるのだろう。



ちなみに岩手だと、多分県南に重コントロール寄り勢が多く、盛岡がピン除去含む除去ガン積み勢が多いので、エドリックさんはナチュラルに辛そうです。辛そうでした。




……しかしキーポイントとなるカードが追加ターン系とかまた青最強じゃないですかやだー。

コメント

まの
まの
2012年8月23日15:05

ビートダウンの弱点である総ライフ120を削る点ですが、実はコレ、卓にビートダウンが複数いるとハードルが下がるんじゃないかと思ってます。
一人で稼げるクロックに限界があっても他のプレイヤーを巻き込めるならクロックはかなりあがります。
ズアーみたいなコントロールが見えたら「アイツからやっちまおうぜ」とビートダウンが手を組んだ、っていう流れがあればキル速度が速まるので通常のEDHを意識しているコントロールはひとたまりもないわけです。DN内でコントロールがプロパガンダや幕屋を採用するかなどの検討が始まったのは多分こういうことかなと。
コンボより速いエドリック増える→殴り負けないビートダウン増える→卓内のビートダウン増えてコントロール押されるという感じがします。
駄文長文失礼しました。

かっこかり
2012年8月23日19:28

>まのさん
>卓にビートダウンが複数いるとハードルが下がる
確かにそういう面はあると思います。他が殴りあってくれればくれるほど自分が削るべき分は減る訳ですし。
環境的にビートが流行っているので多少はビートダウン側が楽になっているというのは確かでしょう。

ただ、これは体感なのですが、ビートダウン同士の協力というのは思ったより難しいです。
最初は「協力してズアー殴ろうぜ」と互いに言っていても、最終的な勝者は1人。大きすぎるクロックを置いていると「これってズアーが倒れると同時に余ったクロックで俺死ぬんじゃね?」となって牽制のしあいになりがちです。

それどころか、ビートダウンというのはコンボと違って目に見えやすい脅威であるため、プレイヤー全員がジェネラルやカードの怖さを把握していないと、
A「そろそろマナも伸びて来ててコンボが来そうだし、協力してズアー倒そうぜ」B「いや騙されないよ。あんたの場のクロックすげーデカイし。ズアー殴ってて隙だらけの今のうちに殺しとくわ」
なんて事にもなりかねません。というかありましたw

そんな訳で、個人的にはビートが並んでもそこまで大きく(2人になったからノルマがプレイヤー2人前である80で済むとか)楽にならないと考えています。


また、こちらも個人的な見解になるのですが、削る枠にもよるのでしょうがプロパガンダのようなカードにコントロール用の枠を割くのは微妙かなー、と考えています。
それならコンボ相手にも汎用性が高いインスタントのピン除去で時間を稼いだ方が安定しそうです。
もちろんプロパガンダよりは影響力は少ないのでしょうが、見えていないので相手の意図を外してクロックを減らす事が出来るため、とりあえず1ターン分くらいは稼げます。ライフは勝つ時に1残ってればいいという考えです。

唯一、青系のクリーチャーがほとんどいないデッキでの《The Tabernacle at Pendrell Vale》に限ってはありかと思っています。0マナで破壊されにくい土地であり、なによりコンボ系でもクリーチャーの少ない型以外は引っかかる汎用性が素晴らしいです。
お値段がアレすぎて気軽に試験投入、という訳にもいかないのが欠点ですがw

ともちん
2012年8月23日22:54

環境によると思いますが、ピン除去で1ターンも稼げるビートは少ないと思います。
ビート=エドリックの環境では、ピン除去でオールOKです。

しかし、ゲイヴをはじめ、トークンを並べるデッキ、数を並べるて強化するデッキ相手では凌ぎにくいです。
数を並べるデッキは、トドメには多少余裕を持って(オーバーキル気味に)殴りますし、それが出来ますから、殴り負ける側は足掻きで1,2体道連れにする程度です。
余程沢山のピン除去を連打するか、相手が時代遅れのジェネラルビート出ない限り、意図を外すことはなかなか難しいです。
1ターン目の極楽鳥を潰せば確かに稼げますが、その1ターンと生きるか死ぬかでの1ターンでは重みが違うと思います。
相手の意図を外せるほどの、多量のピン除去をデッキに積むという意味でしたら、確かに有用と思われます。

また、生物の少ない中速デッキは序盤の闇の腹心なんかからコツコツ殴られるクロックも十分に痛いです。
デッドラインがどんどん縮んでいます。
全ての生物に除去をあわせることは不可能で、本当はブロッカーを用意出来ればいいのですが、それが難しい色もあります。

何かしらライフを護る手段がないと、ウーナのようなデッキではやっていけないと思いました。
ウーナよりも、ニヴとかの方が致命的な問題なのでしょうけれども。
高速コンボではなく中速コンボなので、1ターンだけ稼いでも多くは決め切れません。そしてその1ターンが稼げるかも怪しいです。
だから序盤から圧迫されない工夫が欲しいです。
プロパガンダが最適解とは限りませんが、そういう意図があってカードを検討しております。

かっこかり
2012年8月24日14:56

>ともちんさん
そちらの意図は理解しました。
しかしながら、自分はやはりピン除去の方が優秀であると思っています。
以下にその理由を書かせていただきます、


単純に「並べて」「強化して」殴るだけを考えると、ツーアクション必要になる上に必要なダメージ量も多く、どうしても大振りになります。そのためビートはコンボに比べると重く、遅くなりがちです。

「オーバーキル気味に殴られる状況まで持って行かれている状態」=「コンボ完成を許してしまった状態」と考えると、やはりコンボ対策が優先されるべきであると考えます。

この速度面が逆転するのは、そちらが書かれているように闇の腹心から原始のタイタンまで、「別の仕事がメインでありながら、ある程度の範囲でライフを圧迫するクリーチャー」によるクロックが存在するためです。(他にも、こちらの早目の仕掛けを除去で潰すためなどの点もあるのでしょうが)
ですので、これらのクロックをピン除去で弾く事により、相手の速度をコンボ以下に落とす事が出来ます。

そうして純粋な速度がコンボ>ビートダウンである以上、余分なクロックで速度を落とせば十分に自分がコンボを決める事が可能であると自分は考えています。

もちろん、コンボ+ビート型相手のコンボ部分の速度は中速コンボと同等なので、そういったデッキ相手の場合はコンボ部分に潰されて負ける場合もあります。
そこで防衛用にプロパガンダのような対ビートに偏ったカードを引いているとコンボを仕掛けてきた場合に防げなくなるため、寄り受けの広いピン除去の方が優秀なのではないかと自分は判断した訳です。

もちろん受けの広さを優先している分、《プロパガンダ/Propaganda》に比べるとビート耐性が薄いのはその通りです。相手が早く回った場合、間に合わない事もあるのでしょうから、自分の理論が安定と言いきるつもりはありません。


反論を繰り返すような形になってしまい申し訳ありません。
個人的にはこうして違う意見をやり取りするのは非常に有意義なので、よろしければ今後も「これは違うだろありえねーよ」って気軽にコメントしてくれると嬉しいですw

nophoto
パスワード忘れた民
2018年1月18日13:05

考察いつも楽しく読ませていただいております!
仲間内ですがジェネラルダメージを21点から11点に引き下げてあげると
1試合の時間も短縮できて、ビートも息吹き返してみんな幸せでした。

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